明治生まれ、ガラ紡の糸

2019/01/30

「ガラ紡」の手触りを知っていますか?

その名前から勝手に、粗野でメンズライクな繊維を想像していた私は、布と対面してかなりの衝撃を受けました。

綿の波みたいなその生地を指の腹で撫でてみれば、子供の手に触れたみたいな柔らかさと湿度が伝わり、なんとも言えない幸福感に包まれます。
その糸を紡ぐのは「木玉毛織株式会社」さん。舞台は前回から引き続き、尾州です。

社名の「毛織」と、「綿糸」であるガラ紡のちぐはぐが面白いので、お聞きした解説を一つ。

毛織物が盛んな尾州。明治28年創業の木玉毛織も、かつてはウールを扱う織物工場でした。約15年前、廃業された工場から機械を移設し、それを転機にガラ紡に特化した生産を開始。現在は毛織業から撤退しているものの、その名残が社名として受け継がれているのでした。

次に、ガラ紡機のなりたち。

この機械は、明治初期に日本で発明されました。
手紡ぎの場合、つまんで引き伸ばす側を撚りますが、逆転の発想で、”引き伸ばされる側”の綿自体が回転することによって糸が紡がれ、上に巻き取られていく仕組みになっています。筒が回転するときの「ガラガラ、ガラガラ」という音。それがこの紡績方法を「ガラ紡」と呼ぶ背景にあるのです。

原料について。

少し真面目な話しをすると、繊維の主な分類として、短繊維にあたる綿(コットン)。ただ、品種や個体による違いで繊維の長さが異なります。一本あたりの繊維長が長いほど、細くしなやかな糸の紡績が可能で、高級シャツ地などに使用される印象があります。
そこから、超長綿こそが良質な綿の代名詞だと思い込んでいた私は、その勘違いを知ることになりました。

「ガラ紡」の原料となる綿は、現在の主流である高速紡績の際に振り落とされる”落ちわた”と呼ばれる繊維の短い綿。ふるいにかけられ除外されたものが、かえってガラ紡の紡績法に適していたのだそう。従来では破棄されうる綿が、こんなに個性あふれる、ゆったりとした布になるのかと思うと感動を覚えます。布に生まれ変わるなら、ガラ紡になりたい。

この行儀よく並んだ麩菓子みたいな棒は「撚り子」と呼ばれ、原料の落ち綿をシート状に伸して、棒にし、均等にカットしたものです。これを筒に詰め、引き伸ばすことによって糸が生まれます。

アナログなものづくりの一方で、木玉毛織はオンラインで糸や自社製品の販売を手がけています。試しにgoogleで「ガラ紡 糸」と検索してみれば、この通り。その知名度と信頼が伺えます。

奇想天外で、工業用というよりは発明好きの秘密道具を動かしているような、「ガラ紡」生産の裏側。そこで働く現場の方々もまた、自慢の子を見せるように「面白いでしょう」と案内くださるのでした。

そんな場所で育つと、こんな布になるのかと、改めて感動するばかりです。


機械が動く様子を、YouTubeで見ることができました。