丹後の織物、そもそも縮緬って?

2019/09/19

先般、繊維産地のひとつである丹後へ訪れる機会をいただきました。
この興奮が冷めやらぬ間に生地にしたいと、否、記事にしたいと思います。

丹後の代名詞となるのが丹後ちりめん。食べるほうじゃないですよ。
和装、風呂敷などに使われる、細かなしぼのある生地のことをいいます。

漢字で書くと、「縮緬」—なんか、縮むのかな。糸に関係するのかな。

この「しぼ」は、プリーツやエンボスのように型で凹凸模様を付ける加工ではなく、糸に、その秘密があります。
ああ、長くなりそうな予感。丹後での話は2回に分けましょうか。

さて、つたない説明にお付き合いくださる皆様ありがとうございます。

まず、縮緬に使用するのは、「絹」であること。ポイントです。
のちに、絹がいかにマジカルな素材であるか解ると思います。

そもそもの話をすると、化学繊維が開発される前、古来より使用されてきた繊維には「綿・麻・羊毛・絹」といった天然繊維があります。分類の仕方は様々ですが、今回は「短繊維 / 長繊維」としてみましょうか。

すると絹だけが長繊維、それ以外は短繊維となりました。
短繊維に関して、手芸店に並ぶ糸は100m単位で売られていても、元はちょっと長い毛羽みたいなものが絡み合って一本の糸になっているので、撚りをかけて紡績する、つまりは「糸にする工程」をはさまない事には、ふわふわの塊でしかないのが特徴です。
一方、長繊維である絹は、お蚕様が休まず吐き出し続けた液が糸状になっているので、「糸にする工程」をはさまずとも糸として使用できます。

ここで余談。絹は撚らない方が光沢が強くなるため、絹地に絹糸で刺す日本刺繍なんかでは無撚りの状態で刺繍糸が売られ、刺繍を刺す本人で撚ったり撚らなかったりして使用します。

さて絹糸には2種類存在することがわかった所で、ようやく本題、縮緬の話となります。
実際、「縮緬とはこの2種(撚糸・無撚糸)を組み合わせることによって生まれる」と言ってしまえばそれで済んでしまうような。

深堀りしたい方は続きをお読みください。(繊維という宇宙を想えば全然深堀りではない。)

ひとます無撚糸に関しては、置いておきます。
撚糸、特に強撚糸と呼ばれる、読んで字のごとく強い撚りを絹に掛けて糸にする。そこから縮緬は始まります。
強い撚りの戻ろうとする力が後に縮緬の「しぼ」を生み出すのです。

縮緬には強い撚りをかける技術が要ることが分かりました。
それを叶えるには、湿式撚糸といい、水分を含ませながら撚る方法があります。
(対する乾式撚糸は一般的な撚糸方法。)

丹後の田勇機業さんで、その様子を拝見しました。

撚糸する前に絹糸を浸水 → 熱湯 → 浸水。糸をリラックスさせる。
この状態では、ねじっただけなので、たわませると撚りが戻ってしまいます。
おもりがたくさん!大きさも様々

こうして撚り上がった糸は、乾燥の段階へ移り、こうして強燃の状態で糸が固まります。マジカルすぎる。。。
いったい、誰が思いついたのだろう。

この湿式撚糸について、詳しくは丹後の「ひらく織」さんのブログにあります。

——そして、織ります。

たて糸よこ糸のうち一方を強撚糸、もう一方を無撚糸として織ります。(実際は他にも色々な種類があります。)

織りあがった生地には、まだ「しぼ」がありません。
なぜなら、強撚糸はセリシンコーティングにより内なるねじれパワーを隠しているから。

ここから、精練加工(絹の繊維からセリシンを取り除くこと)により、一気にねじれパワーを解放するのです。

丹後織物工業組合中央加工場にて精練加工のようす

セリシンが除去されることにより、むき出しになったフィブロインは光を反射する性質があり、シルクらしい光沢を生み出します。
また、それまでセリシンに固められていた強撚糸の緊張が解けます。

つまりは糸の撚りが戻ってたわむ(縮む)力を利用して、表面に波打ち模様を生んだのが縮緬の正体だったんですね。
こんなに長い道のりを経て作り出されているとは、とんでもないことだ。

納豆とか、コンタクトレンズとか、何の気なしに存在しているものも、その最初を生み出した人はすごいなーと、知らない昔を想像する事が時々あります。縮緬の最初の人も本当にすごい!