テキスタイル産地ネットワーク vol.7 in 福井が始まります!

テキスタイル産地ネットワーク vol.7 in 福井が始まります!

2023/06/09

産地や地域を超え、全国の繊維産地や地域からプレーヤーが集まり、課題や取り組みなどを共有し未来を考えるクローズドなイベント、テキスタイル産地ネットワークが今年で7回目を迎えます。

2022年は八王子でテキスタイル産地ネットワークが開催されました!

テキスタイル産地ネットワークでは、作り手の減少や技術の存続危機、経営的課題…など、ものづくり産地が直面している課題や悩みをテーマに、様々な立場の人が一年に一度のリアルイベントや通年のオンライントークを通して一緒に考え続けています。

この交流から産地同士のコラボ企画が巻き起こり、イベント当日だけでなく地域に戻ったその後も皆さんの情報共有が盛んに巻き起こっているのも、この会のおもしろいポイント。

日本一の長繊維産地、福井で開催

そんなテキスタイル産地ネットワーク2023は、長繊維の一大産地と言われる福井県で開催します!

開催に向け、ホストである松川レピヤンの松川享正さん案内のもと、福井の会社7社を訪ねながら今年のテーマを模索してきました。

松川享正さんと、松川レピヤンの新しいコミュニティスペースにて。この素敵な空間で産地ネットワークが開催予定です!

訪ねた先は業種や取り組みが異なり、福井産地の幅広さや奥深さをギュッと知ることができた2日間。ここでは少しだけ、各社をご紹介していこうと思います。

❶再生セルロース繊維に特化した産元商社 明林繊維株式会社

明林繊維はレーヨンやキュプラなど、再生セルロース繊維素材を主軸にしている、珍しい産元商社さんです。

最大の特徴は、生地のほとんどを福井県内のメーカーと作っていること。福井で織り加工した生地をストックし、数Mから購入や発注ができる仕組みを整えています。

一方で、どの地域も作り手の存続危機が課題になっている昨今。そんな中でも「これからも産地内でものづくりを続けていきたい」という想いから、産地と企業の持続可能性を目指した経営計画を掲げていることが興味深い点でした。

❷福井の織物の原点、シルク生地に出会える 荒井株式会社

続いて伺った荒井株式会社では、福井織物のルーツである絹に密着できました。実は福井の繊維産業は、絹織物から始まっています。

現在では合繊繊維が産地の主要素材に変わっていますが、伝統を受け継ぎ絹織物を製造している工場も多くあります。

そんな福井の絹織物を伝える役割なのが荒井さんであり、シルク糸の輸入から製造管理、卸まで、絹織物のサプライチェーンを担う貴重で心強い存在です。今回は生地をシルク生地の、資材としての可能性についてお話してくださいました。

❸特殊な反射材と転写プリント 株式会社丸仁

特殊な熱転写の技術を使い、ロゴマークや反射材などの熱転写プリントをする丸仁さんにお邪魔しました。

反射材の反射タイプや接着糊のバリエーションなどが豊富で、素材により糊などを使い分けていることが強み。もちろん独自で開発した接着剤などもあり、そうした選択肢の多さやクオリティが支持されています。

今回お邪魔したこのショップでは、独自開発のオーロラに光る特殊反射材「LIGHT FORCE」を用いた自社製品を購入することができます。最後にお邪魔する松川レピヤンさん含め、皆さんオフィスがとても綺麗で新しいのも、福井産地の注目ポイントかもしれません。

➍確かな縫製技術を支える経営と指針 株式会社ラコーム

山に囲まれ、もともと絹織物が盛んだった福井県勝山地区。訪ねたのは縫製工場の株式会社ラコームさん。

ラコームさんの凄みは、その縫製技術もさることながら、縫製ラインの環境やパターンの提案力、従業員個々の力やモチベーションにあります。

その一つ一つには、現代表である織田研吾さんが社長就任から取り組んできた様々な工夫に秘密がありました。

➎ラッシェルの技術でつくる機能素材 アサヒマカム株式会社

ラッシェルという経編機を使い、下着などの機能素材を作るメーカー「アサヒマカム」さん。整経から編み、染色整理まで一貫して行える大規模な工場で、北陸産地の生産ロットの大きさを感じられます。

着圧ソックスをイメージするとわかりやすいのですが、締め付けたり補強したい体の部分に合わせて編み組織が変化した生地を編むことができます。ジャカードから無地まで生地を作ることができるそうです。織物だけでなく特殊な編み技術も豊富にあるのが、福井の幅広さなのですね。

アサヒマカムさんの生地は現在、海外向けも多くなっているそうです。輸出に強い福井産地の一面を見ることができた瞬間でした。

❻小ロット・短納期加工に特化した染色加工工場 株式会社ウエマツ

大きなロットを生産する北陸地域の中で、小ロット・短納期で加工を仕上げる整理加工工場、ウエマツさん。

機械は小~中ロットに対応したものを設備し、生地の洗い→脱水の機械導線を最短にしていたり、入・出荷する生地の置き場も最小限に抑えられたりと、工場内の随所に小ロット・短納期に向いた特徴が見られます。

こうした経営は、ウエマツさんが創業したときから変わらない方針だそうで、開業から小ロットや短納期の需要を狙った仕組みづくりをされているのが、国内を見ても他にはなかなかない点だと思います。

❼世界一狭い織物?! 織ネームとリボンをつくる 株式会社松川レピヤン

そして、ホストである松川レピヤンの本社と工場、そして、チロリアンリボンの生産を担うエイトリボンに行ってきました!松川レピヤンは服についている織ネームやお守り袋、リボンなど、織物の中でも、すごく幅の狭いテキスタイルを作っています。松川レピヤンがある福井県坂井市丸岡町の地区はこうした織ネームなどの生地を生産する工場が集結し、それらを「越前織」というそうです。

エイトリボンは7年前に松川レピヤンが引き継ぎ、2年前にリノベーションされました。ここでは旧式のシャトル織機でチロリアンリボンを作っており、その生産の様子を見学できます。緯糸がヒョコっと動く機械の動きはずっと見ていたくなる可愛さ。敷地内にはリボンを好きな長さで購入できるファクトリーショップ「リボンズカフェ」もあります。産地ネットワーク当日は、エイトリボンリノベーションやショップオープンへの道のりについてお話が聞ける、、かも?

産地ネットワークの会場候補である松川レピヤンの本社が新しく建てられ、コミュニティスペースが圧巻。ここでどんな交流が生まれるのか、いまからとても楽しみです。

今回松川さんが案内してくれた会社は、「MADE BY」という福井のグループメンバーであったり、MADE BYが企画している工場見学ツアーに参加している企業なのです。

MADE BYは福井に集積する繊維関連企業のネットワークを活かし、エリア完結のものづくりに可能性を拓いていくチームです。詳しくはこちらをご覧ください!

はじめての福井産地で見えたもの・考えたこと

さて、これまでの開催地を振り返ってみると、東京から始まり久留米→有松→丹後→沖縄→八王子と、コンパクトな工場や小規模の事業者さんが多い地域での開催だったように思います。

けれど、今回福井に来て驚いたことは、これまで私たち(少なくともこれを書いている森口)が見る機会の少なかった、会社規模の大きさ!

そしてこれまでの産地ネットワークと少し違うと感じたのは、産業の外からやってきたプレーヤーではなく、メーカーの経営者という、ものづくりど真ん中の当事者たちからも学ぶことがとても多そうだ、というところ。

地元で働くイメージをどう持ってもらうか、社員が働きやすい・誇ってもらえる環境って何だろう。未来への投資はどうしてる?

何十人規模の従業員がいる会社だからこそ出てくる課題や取り組みがあるようで、自分が見てきた産地とは異なる雰囲気に終始圧倒されていた2日間でした。

けれど、繊維産業に携わりたいと思える未来づくりは、産地や工場の大小関わらず大事なテーマです。繊維産業で働くイメージがもっと見やすくなったり、新しい産地との働き方や関わり方を皆で作り上げられたらいいな、なんてぼんやりと思った研修の旅でした。

11月に開催予定のテキスタイル産地ネットワークがどんな会や交流になるのか、今からとても楽しみです!