オカド染色工業 糸からロープまで染める 八王子の糸染め工場

オカド染色工業 糸からロープまで染める 八王子の糸染め工場

2021/09/11

Movie:山口明宏 Text:中野星那、森口理緒 Photo:奥田博伸、大原麻実

オカド染色工業は、東京の西、八王子にある糸染め工場です。織物や編み物に使用される糸だけではなく、ロープなどの染めを受けています。様々な種類をムラなく染めるためのノウハウを持ち、八王子だけではなく全国の繊維産業を支えています。

いろいろな素材、いろいろな太さの糸を染めるノウハウ

オカド染色をきりもりされているのは、三代目の山口琢磨さんと弟の正剛さん。

現在はミシン糸の染めが主要ですが、細い糸から太いロープまで、あらゆる太さの糸を染める技術や、通常ではなかなか綺麗に染めるのが難しいアクリル素材を扱えるなど、経験を背景とした多様な技術を保有しています。実はアクリルにはたくさんの種類があり、その数20種類以上。それぞれ染め方が異なりますが、均一に染めるためにゆっくりと時間をかけること、それぞれの工程に適切なタイミングがあるそうです。

多素材を細かく染めることができる数少ない工場のため、八王子だけではなく岡山など、あらゆる地域から注文が来るそう。多品種な素材を扱ってきた八王子産地だからこそ、性質の異なる素材を染めることに長けているのだと思います。

必要な技術を取り入れ、産業の継承に

糸の染色をするためには糸を巻く工程が必要ですが、かつては専門の人がいました。しかし現在は担う人が少なくなり、山口さんが自社で行なっているそうです。

また、大量生産化が進んでいる現在では製造されていないような貴重な染色機も使っているため、機械の修理をする技術者がおらず、山口さんは自ら部品を作って修理するそう。

産業全体が衰退している今、機械が生産されなくなったり、修理できる技術者がいなくなっています。高度な技術は次々に失われている為、今までと同じモノづくりが難しい時代が来るかもしれません。そんな中でも「八王子の繊維産業を何とか残して、繋ぎたい。」と、強い意志を前向きな笑顔で伝えてくださいました。

代表の山口琢磨さん

ミュージシャンになりたかった

琢磨さんは若いころドラムに夢中で、ミュージシャンになりたかったそうです。しかし家を継いでほしいと先代に言われ、染め工場に入りました。

「いつかは職人をやめればいい」

そう思いながら工場にいたそうですが、ある時、配達先で先代のことを批判され、職人に対する社会の厳しい声を肌で感じたと言います。この出来事がきっかけとなり、染めをとことん極めようと夢を持って仕事に打ち込んだそう。

今でも趣味は音楽で、ジャンルはヘビーメタルからハワイアン。ドラムをたたきながらギターを持って歌うそうで、職人としての強い思いがある傍、趣味を大切にしていることをとても楽しそうに話されていました。

 


 

オカド染色さんの乾燥機にはそれぞれ川の名前が付けられています。付けたのは、川釣りが趣味だった先代。趣味を大切にしながら、機械一つ一つに強い愛着を持っていることがわかります。
新体操の演目に使用される、ロープを染めているそうです。何本もの糸が組み込まれ、中まで均一に色を入れることは難しいのだそう。
染色機に染料を入れるところ。染料は、糸の量やその日の温度などにより細やかな調整が必要なのだそうです。
「綛(かせ)」と呼ばれる糸の束を染めるための機械。この中に糸の束が掛けられ染めていきます。タイムマシーンのようにも見え、工場全体はまるで映画のセットのようです。

 

オカド染色工業

[代表]
山口琢磨

[所在地]
〒192-0054 東京都八王子市小門町59

[創業]
1949年(会社の設立は1985年)

[設備]
釜圧チーズ染色機4台、噴射式染色機4台、その他、脱水機・乾燥機・ワインダー・綛上げ機

[情報]
1949年、山口化繊染色として創業。創業当初からナイロンやポリエステルなどの糸染めをしていました。現在はミシン糸が主力ですが、ニットや織物に使われるナイロンやウール、ポリエステル、綿、麻など、あらゆる素材を染めることが可能です。

【WEBサイト】
http://www.okado-senkou.co.jp/index.html

※本記事は『日本遺産「桑都物語」推進協議会』からの委託により(株)奥田染工場が「つくるのいえ」名義にて実施した調査に基づいて作成したものです。